重さをはかり、価値を決める - はかりの役割と歴史
はかりは、物の重量や量を測定する道具として、人類が発明した最も古い道具の一つです。
古代エジプトでは、麦や小麦を計量するためにはかりが使用されていました。また、古代ローマでもはかりが使用され、貨幣の価値を決定するためにも使用されました。中世ヨーロッパでも、はかりは商取引に欠かせない道具として広く使用されていました。
はかりの起源
計量の歴史は、古代から始まっています。最初に現れた計量は、「数」と「時間」に関するものでした。そして、道具を作るために「ものさし」が生まれ、農業とともに「面積」や「体積」の計量が始まったとされています。
その後、都市国家が発達するとともに人々が金や銀、宝石などに価値を認めるようになってから、「重さ」の計量が始まったと思われます。
重さの計量に最も古くから使われている道具は、「天びん」です。天びんはてこの原理を利用して、物と物の重さを比較することで、重さを測定することができます。その起源は、エジプトの古代文書「死者の書」に描かれているように、紀元前5000年頃と考えられています。
天びんは、基準量となる分銅(おもり)を用いて重さ(質量)をはかることにより、商品の取引をはじめ、農業、工業、科学などの発展につながる人類の文化に必要不可欠な道具として進化してきました。
現代においても、はかりは私たちの生活に欠かせない道具です。はかりは、商品の重量をはかるだけでなく、医療や科学などの分野でも活躍しています。また、技術の進歩により、より正確で高精度なはかりが開発され、さまざまな分野で利用されています。
はかりの構造から見た歴史
はかりの歴史は、「てこの原理」を用いた「手動天びん」から始まりました。古代エジプトの文書に描かれた天びんから、中世ヨーロッパで発明された「三角天びん」や「水天秤」、江戸時代の日本で使われた「薪能天秤」など、様々な形がありました。
しかし、時代とともに技術も進化し、物理の原理を取り込んだはかりが生まれました。ばねの弾性を利用した「ばねばかり」や、浮力の法則を利用した「浮力式天びん」、ロバーバル機構を利用した「台ばかり」などが登場しました。
そして、20世紀に入り、電子技術の発展が進むにつれて、はかりもデジタル化、自動化へと進化していきました。デジタル表示を持つ「電子天びん」や、自動的に計量してくれる「自動はかり」などが一般的になりました。これらの進化により、はかりは精度も高まり、より便利な計量器具となりました。
今では、私たちの生活に欠かせないものになっています。スーパーマーケットなどで買い物をする際には、商品の重さを計るはかりが必要ですし、病院や工場などでも計量が欠かせません。また、はかりの進化により、より正確で迅速な計量が可能になり、多くの分野での業務効率化につながっています。
これからも、はかりは進化を続け、私たちの生活に役立つ計量器具として発展していくことでしょう。
天びん
天びん(手動天びん)は、はかりの最も古い形式であり、その原理はてこの原理に基づいています。左右の腕の長さが等しい単一てこを用いて、分銅と測定物の重さ(質量)を釣り合わせて計量を行います。
手動天びんは、非常にシンプルでありながら、正確で信頼性の高い計量が可能です。一般的に使用されるひょう量は、100g~50kgで、精度が1/10000~1/200000とされています。手動天びんは、機械式のはかりであり、電力や電池などの電源が必要なく、使用にあたって特別な技術を必要としません。
しかし、手動天びんにはいくつかの欠点があります。操作方法や手順、熟練を要すること、測定に時間が掛かることなどが挙げられます。また、測定の正確性は、使用者の技能や環境に大きく影響を受けるため、注意が必要です。
近年では、デジタル技術の進歩により、自動計量機やデジタル天びんなどが普及し、手動天びんの需要は低下しています。しかし、手動天びんは、シンプルで信頼性が高く、長期間の使用にも耐えるため、一定の需要を持ち続けています。
さおばかり
はかりの進化は、さまざまな発明や技術革新によって進められてきました。その中でも、さおばかりは現代に至るまで使用されているはかりの起源として非常に重要な役割を果たしています。
さおばかりは、てこの原理を応用した計量器具で、1本の棹(さお)と、1個の錘(おもり)を組み合わせて使用します。重さをはかる「ひょう量」ごとに一定の比率で錘が作られており、それぞれの錘に使用できるひょう量が併記されています。このしくみにより、持ち運びが便利になり、広く普及することができました。
さおばかりは、ローマ時代に発明されたとされています。当時、交易が盛んになり、より便利な計量器具の需要が高まったことが発明の背景となっています。さおばかりは、精度が高く、また、持ち運びが簡単であったため、広く普及することができました。
現代のはかりも、電子技術の進歩によって、高度な精度や自動化が可能となっています。しかし、はかりの起源はさおばかりという、てこの原理を応用したシンプルなしくみにあります。今後も、新しい技術や発明が生まれ、はかりの進化が進むことでしょう。
上皿天びん・台はかり
上皿天びんや台はかりは、商業や工業などの分野で重要な計量器具として使われています。それぞれの発明によって、重量の正確な測定がより効率的かつ正確になりました。
1669年、ロバーバル機構を使った上皿天びんは、商品と分銅が同じ重さであれば、置く位置に関係なく釣り合い、異なる場合には傾くことができるようになりました。そして、1774年には、台はかりが発明され、数十トンの重さを測定することができるようになりました。
台はかりは、3本のてこの直列連結を使用しています。うち2本のてこで台を支え、他の1本でつりあわせています。また、Y字形(長機)とV字形(短機)の合体てこを用いることで、台を広げることができます。増おもりも台はかりごとに応じたものを使用する必要があります。
上皿稈はかりは、力点側に定量増おもりと送りおもりを併称して、てこ比が5~10と比較的小さい構造をしています。したがって、大きい計量には不向きですが、ひょう量が500g~10kg(精度1/2000)であるため、一般の商店で広く使用されています。
このように、天びんやはかりは、時代とともに進化し、より正確で効率的になっています。それぞれの発明は、商業や工業において、正確な重量測定に不可欠なものとなりました。
ばね式指示はかり
1770年にイギリスで発売されたばね式指示はかりは、弾性のあるばねとフックの法則を利用して、直線目盛りの手はかりと同じように重さを計測することができます。ロバーバル機構と組み合わせることで、上皿式のばね式はかりが誕生しました。このようなばね式はかりは、上皿式と比較して正確さが増し、取り扱いも簡単であることから広く普及しました。
しかし、ばね式はかりには、温度によるばねの伸縮誤差があるという問題があります。そこで、制温ばねが開発され、温度変化に対して補正することができるようになりました。
さらに、ばね式計量機構を用いた自動指示台はかりも開発されました。このはかりは、台手動式はかりの構造と、横皿指示はかりのばね式計量指示機構を組み合わせたものです。表示機構部に吊棒で連結することで、重さを自動的に計測し表示することができます。
以上のように、ばね式指示はかりは、手はかりと比べて正確さや取り扱いの簡単さが特徴です。また、温度による誤差があるという問題がありますが、制温ばねによって補正することができます。今後も、はかりの技術は進化し続けることでしょう。
ロードセル式はかり(電気抵抗線式はかり)
ロードセル式はかりは、荷重変換器として知られる装置を使用しています。この装置は、物体の重量を荷重センサーで検出し、それを変換器で変換して表示するという仕組みです。
このロードセル式はかりの歴史は、1938年に物体のひずみを電気抵抗値に変えて測定するためのセンサー(ストレインゲージ)が発明されたことに始まります。1954年には、ロードセルとしてはかりへの応用が実用化されました。
ロードセルは、起歪体と呼ばれる部品にストレインゲージを貼り付け、その計測された抵抗値の変化により重量を算出します。このストレインゲージは、物体が受ける力によって微小に変形するため、その変形に伴い抵抗値が変化します。その変化を計測し、荷重変換器で重量に変換して表示するのが、ロードセル式はかりの仕組みです。
このロードセル式はかりの構造には、前述のようにロバーバル機構が利用されています。ロバーバル機構とは、平行四辺形のリンクを掛けるものの大きさが等しければ、中心から左右異なった位置に掛けてもつり合い、稈の上側でも支えることができるという原理です。この機構によって、重量が均等に分散され、正確な測定が可能になっています。
今日では、ロードセル式はかりは、様々な分野で利用されています。例えば、自動車の重量測定、建設現場でのクレーンの荷重測定、食品や薬品の包装量の測定など、その用途は多岐にわたっています。ロードセル式はかりの測定原理は、今後も進化を続け、より正確な測定が可能になることが期待されます。
電磁式はかり(フォースバランス)
電磁式はかり、またはフォースバランスはかりは、機械式天びんと同じように、重量を測定するために使用される測定機器の一種です。このタイプのはかりは、試料を載せる側に電磁力を加え、天秤の稈を合わせます。試料の重さによって、つり合わせるために必要な電気の量が変化し、ちょうどつり合った時の電気の大きさを算出して、その値から質量を求める構造になっています。
この電磁式はかりは、機械式はかりと比べて、正確で高精度な測定が可能であり、また大型の試料や重い物体の測定にも適しています。しかし、精度を保つためには、外部の電源が必要であるため、携帯性に欠ける点があります。
電磁式はかりは、科学実験や医療機器などの分野で広く使用されており、正確で確実な測定を必要とする産業分野でも重要な役割を果たしています。また、電磁式はかりは、自動化された生産ラインやロボットにも使用されており、高速かつ正確な測定を行うことができます。
電磁式はかりの構造には、コイルや磁石、荷重センサーなどが含まれており、これらの要素がうまく組み合わさって、正確な測定が実現されています。電磁式はかりは、構造が複雑であるため、正確な測定を行うには、適切なメンテナンスやキャリブレーションが必要であることに注意が必要です。
誘電式はかり(音叉振動式、静電容量式)
a)音叉振動式はかり
音叉振動式はかりは、二つの音叉を使って荷重を測定する方法です。二つの音叉を接触させ、両端を閉じた形の音叉振動子に荷重を加えると、音叉の振動周波数が変化します。この原理を利用して、荷重を測定することができます。音叉振動式はかりは、ロードセルでいう「歪計」ではなく、「力計」を利用した構造でできており、経年変化が少ないため、長期安定性に優れています。
b)静電容量式はかり
静電容量式はかりは、荷重の変化をコンデンサーの極板のすき間の変化に変えて電子信号を取り出す方式で、駆動電流が小さいことから、乾電池の電源量で、長時間の連続運転を可能にしたものもあります。静電容量式はかりは、二枚の金属板の間に試料を挟み込んで測定します。このとき、荷重によって金属板の距離が微妙に変化し、その変化を感知することで、荷重を測定することができます。